歴代高柳賞-歴代高柳研究奨励賞

H25年度(2013)高柳研究奨励賞受賞

中田 篤史(なかた あつし)

【 静岡理工科大学理工学部電気電子工学科 講師 】

再生可能エネルギー発電用インバータの
非線形出力抑制制御に関する研究

電力系統における事故や負荷急変によって瞬時電圧低下が発生し、自動化された工場や半導体製造工場などの機器が停止し、近年問題視されている。需要家の受電点である負荷端電圧を瞬時電圧低下時にも一定に保つために、直列形電圧補償装置(SVC)が用いられている。SVCは系統7電圧と同期した電圧をパルス幅変調(PWM)インバータによって発生させ,系統へ直列に挿入した変圧器を介して不足分電圧を重畳する装置である。SVCは、系統電圧を降圧する並列変圧器と交流を直流に変換する順変換器にて構成される並列器、直流を交流に変換するインバータと系統へ電圧を加える直列変圧器にて構成される直列器、両者を接続する中間リンクコンデンサ、順変換器、インバータが発生するPWM電圧からリプル電圧を除去して正弦波状にするLCRフィルタで構成される。電圧形PWMインバータにおいて、半導体素子の上下アームの短絡防止のため、オン、オフ切り換え時に、デッドタイムを設ける必要がある。デッドタイム期間中に半導体素子とigβ並列に接続された環流ダイオードへ電流が流れることによってパルス列のデッドタイム電圧が発生する。フィルタのリアクトルや変圧器の内部インピーダンスに電流が流れることによってインピーダンス電圧が発生し、電圧降下が発生する。デッドタイム電圧とインピーダンス電圧の抑制、出力電圧の非線形性の抑制と適切なキャリア周波数の選択、リプル電圧を除去するための最適なLCRフィルタ値を理論的に求め、実機の特性とほぼ一致する設計手法をこれまでの研究成果として得た。

本研究の成果は瞬時電圧低下時の短時間発電用インバータに限定されている。しかしながら熱的な問題を解決すれば、再生可能エネルギー発電に応用が可能である。今後の研究として、インバータの発熱抑制に関する研究を進め、本研究の成果を用いて再生可能エネルギー発電用インバータの非線形出力抑制制御に応用する予定である。

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