H25年度(2013)高柳研究奨励賞受賞
【従来の研究成果の概要】
7r共役系有機材料である(チオフヱン/フェニレン)コオリゴマー(TPco)結晶は両極性発光トランジスタの実現に成功し、初の電流注入による有機半導体レーザー実現が期待されている極めて優れた新規有機半導体である。申請者は気相成長によってナノニードル結晶を作製し、顕微発光分光により単一ナノニードル結晶の発光特性を調べた。その結果、ナノニードル結晶は光導波路として働き、両端がミラーとして機能しフアプリーペロー共振器として働くことを見出した。さらにナノニードル結晶内の横モードを計算した結果、断面が160nm×80nm以下のサイズであれば横シングルモードが実現することを明らかにした。
【今後の研究計画】
TPCOナノニードル結晶はKCI基板上に気相成長法によりエピタキシャル成長することによって自己組織的に形成する。これまで多くの結晶を作製してきたが、ごく稀にマイクロサイズのリング状結晶がKCI基板上に形成されているのが見つかっている。基板表面のAFM観察から、KCI結晶の螺旋転位によって生じたKC1円盤状ステップ構造の周囲にTPCO分子がエピタキシャル成長していることが分かってきた。さらに顕微発光測定によりリング共振器として機能することを明らかにした。これまで上述したナノニードル結晶では結晶の両端面によるフアブリーペロー共振器構造を調べてきたが、本研究ではこの自己組織化マイクロリング結晶がリング共振器として機能することを詳細に調べることを目的とする。ナノニードル結晶で現れるフアプリーペロー共振器と比較し、リング共振器構造ではウィスパリングギャラリーモードが支配的となるため、光閉じ込めの指標となる共振器Q値が極めて大きな値となることが予想される。これは低聞値な有機半導体レーザーの実現だけでな<、光の分散制御まで可能となる極めて興味深い系である。