H26年度(2014)高柳研究奨励賞受賞
フォトニック結晶面発光レーザ(PCSEL)は、半導体レーザと2次元フォトニック結晶を組み合わせた技術であり、従来の半導体レーザでは困難であった大面積単一モードの実現や、偏光、ビームパターン、出射角度など様々な新しい光制御が可能なデバイスである。PCSELは、1999年に京都大学の野田教授により原理が提案されたが、我々は2007年から野田教授のグループと共同研究を始め、産業応用に向けて、当時数十mWレベルであった光出力の改善に取り組んできた。この結果、2013年に世界に先駆けて、200mW級のPCSELの実用化に成功し、2014年には室温連続動作でW級の光出力を達成した。(最新の成果は、英国論文誌Nature Photonics B誌に掲載された。)
今回の研究の特徴は、高品質のフォトニック結晶を実現した点にある。従来は、基板同士を貼り合わせてフォトニック結晶を作製する技術が用いられていたが、接合界面に結晶欠陥や界面準位が形成され、光損失を生じ、高出力化を妨げていた。我々は、有機金属気相堆積法の再成長技術を利用することで、接合界面を生じず、高出力化に適した構造を実現した。更に、再成長時に形成される空洞の側壁を、垂直から適切に傾斜させることで、高出力が実現できることを実証し、ワット級光出力を実現した。これにより、直接微細加工用光源、固体レーザ励起用光源、波長変換用基本波光源、などの幅広い応用が期待できる。
本研究成果を踏まえ、本格的な加工応用に向けて、今後4年間、JSTのACC:ELプロジェクトと連携して、単一デバイスでの10W級、合波技術により100W級という更なる高出力化を目指す。我々はキーデバイスであるPCSELの作製を担当するが、ゆくゆくは日本の加工産業の競争力の向上につながるよう研究に取り組みたい。
現在、この成果の事業部への技術移転を進めており、今秋製品化の予定である。