H27年度(2015)高柳研究奨励賞受賞
【研究背景】
PETとは、陽電子を放出する放射性物質で標識した薬剤を体内に投与し、陽電子の作用で細胞内から放出される消滅放射線(y線511keV)をシンチレータや光電子増倍管などの光技術及び電子技術を駆使して計測する手法である。捉えた光を断層像にマッピングしたものがPET画像で、臨床現場で幅広く利用されている。我々は自社開発の頭部専用PET装置SHR・12000と全身用PET装置SHR・92000を浜松PET診断センターに設置し、がんや認知症など様々な研究を行っている。
【研究成果の概要】
本研究では、近年増加し社会問題にまで発展している認知症に着目した。健常者と早期認知症患者の脳内生体情報の微弱な信号差を識別することができれば、症状が現れるまで発見は困難とされる認知症の早期発見に繋がると期待できる。そこで我々は、認知症患者の重篤度を客観的に数値化する画像解析手法を考案し、検証の結果、診断精度約90%を得た。次に、約6,000人から構成される性別・年齢別大規模健常脳データベース(DB)の作製に取り組んだ。両者を併用することで適正な正常基準との脳代謝変化を客観的に比較でき、認知症の早期発見が期待されるためである。さらに我々は、両者を併用した医師読影補助ツールを開発し、2011年より実際の脳検診での試験運用を開始した。約3年間で1,000人に受診していただき、約11%の認知症・認知症予備軍を早期発見することができた。このように光を画像化するPET装置の開発や応用・臨床研究を経て、近隣の地域医療へ貢献することができた。
【今後の研究計画】
まずは診断精度の向上を図り、次いで認知症以外の脳疾患や様々な放射性薬剤等へ対象を拡充する予定である。最終的には幅広く医療現場で使用してもらえるよう患者及び医師に有益なシステムを構築したい。