H28年度(2016)高柳研究奨励賞受賞
【従来の研究成果の概要及び今後の研究計画】
申請者はこれまで、光とナノサイズの金属によって生じる表面プラズモン共鳴現象を利用した新規超解像イメージングの提案、各種光デバイスの新機能発現、性能向上に取り組み、様々な研究成果を挙げてきた。
光イメージング分野において、金属ナノワイヤをアレイ状に配列した構造がレンズの役割を果たすことを発見し,伝搬特性を解析した.従来の透明なガラスやプラスチックでできたレンズは、回折限界と呼ばれる解像度の物理的限界があり、可視光領域において100nm以下の物体を観察することは不可能であった。申請者は、金属ナノワイヤに誘起される表面プラズモン共鳴現象に着目し、光エネルギーを表面プラズモンによる電子振動エネルギーに変えて金属ナノワイヤ1本1本を伝搬素子として用いることにより、回折限界を超えた解像度を有するレンズとなることを世界で初めて提案した。その他、電子工学研究所の猪川教授らとの共同研究により、金属微粒子の付着による超薄膜SOIフォトダイオードの感度向上メカニズムの解明と実証に成功した.さらに、同研究所の川田教授らとの共同研究により、深紫外線励起表面プラズモンによる蛍光増大、高感度生体イメージング,光電子放出増大を実証した.特に金属上における蛍光増大研究においては、アルミニウム金属表面の自然酸化に着目し、アルミナ層をスペーサとすることで表面プラズモン増強場による蛍光増大に成功している。今後は、これら研究成果のさらなる発展のみならず、プラズモニクス分野において世界的に先導する科学者となることを目標に新規研究テーマを計画している。具体的には、可視情報と距離画像情報を同時取得可能なプラズモンフィルタを実装した新規イメージセンサの開発および金属線幅50nmパターニングを実現する2光子励起光還元法による超微細金属ナノ構造作製技術の確立である。