H28年度(2016)高柳研究奨励賞受賞
【従来の研究成果の概要】
本候補者の研究テーマである極低ノイズ・広ダイナミックレンジを両立するイメージセンサに関して、世界的にも高く評価されていることを示すものとして、半導体集積回路技術の分野では最も権威があり、厳選された論文のみが採択される国際会議であるISSCC(lnt.Sol id-State Circui tsConference)において採択され、2011年2月に発表を行っていることが挙げられる。ISSCCは、半導体集積回路の各分野において、全世界の企業や大学等の研究機関がトップの性能を競うことから「半導体のオリンピック」とも呼ばれている。さらに、同会議から優秀論文が選定され、そのフルペーパーがIEEE J. Solid-State Circuits (集積回路分野では、最も権威のある学術雑誌)の特集号に推薦されるが、本候補者の論文もその1つに選ばれ、2012年1月号に掲載されている。上記の技術を利用してバイオ・メディカル用の高時間分解能を用いたマルチタップロックイン画素イメージセンサを開発し、10psの時間分解能の達成と共にシングル細胞レベルの蛍光寿命イメージングが実現できた。この研究の成果もISSCCにおいて採択され、2015年2月に発表を行った。また、同会議から優秀論文として選定され、IEEE J. Solid-State Circuitsの特集号(2016年1月号)に掲載された。
【今後の研究計画】
極低ノイズ、時間分解計測技術を適用して、生きた細胞のイメージング法として注目されている蛍光相関分光法の新しい手法を提案し、その計測のための新しいシングルフォトンセンシティビティを用いた半導体チップを試作する。プロトタイプ試作によりその有効性を明らかにするもので、従来法で必要とされる光電子増倍管を用いた大がかりなシステムではなく、成功すれば半導体チップ上で直接試料の蛍光寿命計測がリアルタイムで行える点で画期的な成果となる.その有効性が確認されれば、リアルタイム蛍光寿命イメージングの手段として最も有効な方法と考えており、学術的にも、また医療産業としても大きな意義がある。