歴代高柳賞-歴代高柳研究奨励賞

H29年度(2017)高柳研究奨励賞受賞

瀧口 優(たきぐち ゆう)

【 浜松ホトニクス(株)中央研究所研究員 】

位相変調型空間光変調器による動的点像分布関数制御に関する研究

位相変調型空間光変調器を用いた高度位相制御技術とその応用研究に関して、高開口数対物レンズ集光下における、動的点像分布関数制御の実証研究及び応用研究を進めている。

近年、光学の分野、とりわけ高開口数を有する対物レンズを利用した顕微観察・レーザ加工分野において、高精度な光の空間的な位相変調技術が重要になりつつある。応募者の所属機関で研究を進めている液晶型空間光変調器(Liquid Crystal on Silicon Spatial Light Modulator, LCOS. SLM)は、光の純粋な位相変調を空間的に実現できるデバイスであり、高度な光学設計技術と組み合わせることで上記の要請を実現する手段として世界的な拡がりを見せている。応募者は、これまでの研究において、特に高精度な光技術と位相制御の双方が必要となる光学系の点光源に対する応答特性を示す点像分布関数の、理論計算及び動的な制御に注目し、LCOS・SLMの持つデバイス特性を考慮した位相変調方式の検討、光学系の最適化などの研究を推進してきた。その結果、従来研究より高精度な点像分布関数理論計算を確立した上で、レーザ加工における屈折率界面に発生しうる収差を補正することで、加工速度の改善や高精度化を実験的に実証できた。

同様に、レーザ顕微鏡への動的点像分布関数制御技術も実現し、これまでの顕微鏡では得られなかった多点・収差補正・多焦点・被写界深度拡張などの個別あるいは同時実現に成功し、顕微観察技術の高機能化にも大きく寄与した。国際学術誌への投稿とともに、それらの技術の多くが特許出願され、多様な装置への適用や関連技術への転用が進められている。

今後は高精度位相制御技術の向上に加え、偏光・振幅の同時制御を図ることで、これまで世の中で報告されていない、より高機能な点像分布制御技術の確立を目指したい。同時に、LCOS・SLM性能向上にも寄与する研究を進め、応募者の研究で得られた知見の有効活用も睨んだ新たな応用研究課題にも取り組みたいと考えている。

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