H30年度(2018)高柳研究奨励賞受賞
永久磁石同期モータは、産業用・家電用の可変速制御用モータとして数多く利用されているが、駆動時にトルク脈動を発生することが問題となっている。トルク脈動は、振動や騒音の発生、速度変動による制御精度の悪化の一因となり、人へ不快感を与えることもある。そのため、トルク脈動の低減が不可欠となっている。
本研究では、周期的なトルク脈動に起因するモータフレーム振動を、フィードフォワード制御により抑制する制御系を基本として、それに用いる補償信号を学習制御により獲得する手法の開発に取り組んでいる。実機実験結果より、提案手法により振動抑制効果が最も大きい条件では、振動抑制制御前の振動振幅に比べ、振動抑制制御中の振動振幅は10%以下まで抑制されることを確認した。
また、日本国内での全消費電力のうち約半分はモータが消費しており、全てのモータの効率を1%向上させれば、発電所が1基不要になると言われている。そのため、モータの効率を向上させることは非常に重要である。モータの小型化・高性能化・高効率化を実現するためには、コイルの占領率を向上させることが重要となっている。本研究では、平角線を利用し、さらに占領率を向上させる形状にしたコイルを使用した高効率モータの開発に取り組んでいる。その第1試作機として、 トヨタ車体製一人乗り電気自動車COMSのモータ(永久磁石型同期モータ)を利用したモータを製作し、その特性を純正機と比較した。
モータ効率の測定結果より、モータ効率の最高値は、純正機は87.9%、試作機は95.2%であり、純正機に比べ試作機は、約7%最大効率が上昇することを確認した。第1試作機は、固定子巻線のみを改造したものであるが、今後はモータの設計も含めた試作機を製作する予定であり、最終的には、製品化を目指している。また、特許の関係で論文発表、学会発表等ができていないが、準備が整い次第、発表を行う予定である。
本研究では、低振動・低騒音で人に優しく、高効率で地球環境にも優しいモータの開発を目指している。