R1年度(2019)高柳研究奨励賞受賞
申請者はこれまでに、①化合物半導体の結晶成長と光デバイス応用、②電子線描画装置を用いたナノ周期構造の作製と光デバイス応用、③LEDの照明応用に関する研究を行ってきた。①の化合物半導体の結晶成長と光デバイス応用に関しては、静岡大学ではⅢ-V族化合物半導体混晶であるInGaPやInGaAsの液相成長に関する研究を行い、組成変換法という方法で液相成長では困難とされてきた格子不整合が大きな混晶半導体の高品質結晶を得ることに成功した。三重大学に着任してからはⅢ族窒化物半導体の気相成長と紫外線受光素子の特性評価に関する研究を行い、GaNの紫外線受光素子で真空紫外光を受光できることを明らかにした。
②と③の研究は現在も続けている研究である。②の研究では2002年に電子線描画装置を導入し、ミクロン~ナノオーダーの周期構造を利用した回折レンズ、表面プラズモンセンサー、ワイヤーグリッド偏光子などの作製を行ってきた。回折レンズにおいてはレンズ構造の形態を制御することで所望のレーザー光の焦点分布やLEDの配光特性を制御できることを明らかにした。表面プラズモンに関する研究では金属回折格子を用いることで伝搬型表面プラズモン共鳴による異常透過現象が発生することを見出し、これを用いた表面プラズモンセンサーやワイヤーグリッド偏光子などの作製を行ってきた。今後もこれらの研究は引き続き行う予定で、金属回折格子による伝搬型表面プラズモン共鳴を用いた白色発光体の作製とレーザー照明への応用、金属回折格子を用いた紫外線吸収体の作製、表面プラズモンセンサーの屈折率計応用、焦点分布制御型回折レンズの作製とレーザー加工機用レンズへの応用などのテーマに挑戦する。
③の研究は①の化合物半導体に関する研究で得た知識を活用し、地元企業等とLED照明の植物工場への応用、伝統工芸品と組み合わせた感性系照明などに関する共同研究を行ってきた。今後はLEDだけでなくLEDの後に実現すると考えられるレーザー照明への応用に関しても行っていく予定である。