歴代高柳賞-歴代高柳研究奨励賞

R2年度(2020)高柳研究奨励賞受賞

中西 篤司(なかにし あつし)

【 浜松ホトニクス(株)中央研究所研究員 】

テラヘルツ波計測技術の実用化に向けた応用研究

①テラヘルツ(THz)波は光と電波の間の領域に存在する電磁波であり、THz波時間 領域分光法(Terahertz time domain spectroscopy:THz-TDS)などの分光計測法によって 物質の分子間振動に起因する吸収ピークなどを取得することができ、特定の化学物質成分の検出、 物質の機構解明などに役立つことが知られている。しかしながら、THz波は、空気中の水蒸気による 吸収があるため、通常の透過計測系では水蒸気の影響を受け、計測効率が低下し、S/N比が低下するなどの課題が あった。そこで、当社独自の一体型ATR(減衰全反射)プリズムを初めて導入したTHz分光 分析装置の実現に取り組んだ。その結果、実際に水蒸気の影響を抑え、光学定数が取得できていることを確認し、 装置化の実現に成功した。本装置は、化学分析や医薬品研究に実際に活用されており、今後は電子材料の 開発などにも活用されることが期待される。

②当社で開発されたTHz非線形量子カスケードレーザー(THz NL-QCL)は室温動作が 可能であり、小型、取り扱いが容易であることから、実用的な電子デバイス光源として期待されている。 その応用研究の成果として、THz NL-QCLが非常に良好なビームプロファイルを有しており、 THzイメージング光源に適していることを初めて示した。さらにTHz NL-QCLを用いた 非破壊イメージングに世界で初めて成功し、樹脂内部の気泡、封筒内部の様子などを可視化することができた。

③資源循環材料であるバイオマス複合材料に着目し、バイオマス複合材料の一つである 木質プラスチック(WPC)の木粉含有比率によって THz波の光学定数が異なることを見出し、 WPCのTHz波光学部品材料への適用可能性について世界で初めて提案した。

今後の研究の展開

THz NL-QCLなどのTHz電子デバイス光源による応用計測や、バイオマス複合材料など 環境材料を評価するためのTHz波による分析技術など、THz波による計測技術の研究を推進する。

『歴代高柳研究奨励賞』贈呈一覧はこちら