R2年度(2020)高柳研究奨励賞受賞
今日、ウェブ情報の信憑性が問題になっている。東日本大震災や新型コロナウィルスの流行時にも起きたように、 ウェブ上でデマやフェイクニュースが蔓延すると、一般市民は誤った情報を取得し、誤った意思決定を行う可能性がある。 これまで申請者は、一般市民が質の高いウェブ情報を取得できるよう、ウェブ情報の信憑性判断支援システムに関する研究を 行ってきた。具体的には下記項目について研究を行った。
1.信憑性を比較判断するための材料情報のウェブマイニング技術
2.集合知に着目した情報信憑性評価アルゴリズム
3.ユーザの信憑性判断モデルを考慮した信憑性指向のウェブ検索ランキング(図1)
特に、項目3に関する研究は、HCI分野の最難関国際会議であるACM CHIに採録される高い評価を得た。
今後の研究の展開
上記研究は、判断に有用な情報を提供しさえすれば、ユーザは情報の信憑性を的確に判断できることを 想定していた。しかし、これまでの申請者の研究によって、判断材料が豊富に与えられても、ユーザは動機づけられて いなければ情報を批判的に吟味しないという問題が明らかになった。 そこで、今後は「ウェブ情報の品質を批判的に吟味するよう、ユーザの態度や行動を変容させるインタラクションデザイン」に関する プロジェクトを推進する。具体的には、4.信じたい情報を優先的に取得しようとする「確証バイアス」をもつウェブ検索ユーザの検出技術
5.批判的な情報探索の必要性を暗に感じさせるウェブ検索インタラクション(図2)
6.批判的な情報探索を説得的に促すウェブ検索インタラクション
に関する研究を行う予定である。一部の研究項目については着手し始めており、項目5の成果については、 デジタルライブラリに関する最難関国際会議であるACM/IEEE JCDL 2020で最優秀論文に選ばれるなど、成果を 上げ始めている。今後は、情報科学だけではなく行動経済学や認知心理学の知見を横断的に活用し、 批判的な情報探索を促進するインタラクションデザインの追求を行う。