歴代高柳賞-歴代高柳研究奨励賞

R6年度(2024)高柳研究奨励賞受賞

本良 瑞樹(もとよし みずき)

【 静岡理工科大学 理工学部 教授 】

ダイレクトディジタル RF 技術を用いた小型無線機に関する研究

CMOS プロセスではミリ波は困難であると言われていた 2000 年代初め頃より,発振器や増幅器などの高周波コンポーネントから無線トランシーバ IC(論文誌[30],[27],[18]など)など無線通信用 CMOS 集積回路の高周波化・高速化をミリ波・短ミリ波で実現してきた.回路の寄生容量などを減らすレイアウト技術(論文誌[23]など)や損失を削減するため波長短縮効果を用いた伝送線路などデバイス,116GHz 低位相雑音発振器(国際会議[82]), 0.1dB 帯域幅 12GHz/群遅延偏差 10ps の広帯域 140GHz 帯 LNA などミリ波・短ミリ波回路などを実現してきた(論文誌[27]).高周波・広帯域回路技術の研究を行い 135GHz 帯で ASK 変調を用い 10Gbpsを実現するトランシーバ IC を提案してきた(論文誌[18]).

従来の無線通信機はディジタル回路主体の DSP(Digital Signal Processor)から低い周波数(ベースバンド)のデータ信号を出力し,アナログ回路主体の変復調器で無線通信に用いる高周波信号を送信,またはその逆のプロセスで受信する.アナログ回路はインダクタなどの素子を用いるため回路サイズが大きく,また,雑音や周辺素子との不要結合による特性劣化が課題となる.特に 5G 携帯電話では 256 や 1024 個の複数アンテナ・通信機を半波長以下の間隔で高密度に集積して実現される Massive MIMO のため,回路の小型化・高集積化が必要となる課題となる.RF 信号をミキサや局部発振器などのアナログ回路を用いず,直接ディジタル回路から送信または受信するダイレクトディジタル RF はその課題解決に有効と考えられる.そこで,パルスの粗密により振幅情報を表現する 1bitΔΣ 変調を用いることで,ディジタル回路から直接高周波アナログ信号を生成することを提案してきた(国内会議[1],[6]など).

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