R7年度(2025)高柳研究奨励賞受賞
窒化薄膜は電子材料のみならず、微細化・高性能化・低消費電力化が求められる現代の半導体技術において重要視されている。窒化薄膜の創製方法は多岐にわたり、ターゲット材を利用した真空成膜法や反応性ガス雰囲気で高温加熱する窒素拡散法などがある。応募者はSDGs達成に貢献する省エネルギー化の観点から、常温・大気圧環境で金属表面に窒化薄膜を創製するプロセス開発に従事してきた。具体的には、窒素ガス雰囲気で大気圧プラズマを金属表面に照射する手法である。誘電体バリア放電によって比較的低出力で高密度の窒素プラズマを発生させることができ、加熱することなく金属表面に窒化薄膜を創製することに成功した。なお、本プロセスは照射ノズル径や電極形状を変化させることにより、平板や丸棒などの様々な部材の表面に窒化薄膜を創製することができる。本技術については、2022年に特許出願を行った。また、別の窒化駆動力を利用して、窒素を含む小径粉体の衝突現象に注目した常温・大気圧窒化薄膜創製プロセスも確立した。粉体表面の窒化物が金属表面に移着する現象を積極利用したプロセスであり、粉体の投射条件(圧力や時間)によって金属表面に形成される窒化薄膜の厚さが変化することを明らかとした。なお、本プロセスに欠かせない高濃度窒素を含む小径粉体については、応募者の有するノウハウを用いて作製することができる。この高濃度窒素含有粉体の創製手法については、2025年に特許出願を行った。
今後の研究計画としては、大気圧プラズマによる窒化薄膜の創製効率と創製範囲のトレードオフを解消する予定である。現在の技術では、局所領域にプラズマを集中させて窒化薄膜を短時間で創製しているが、その反面、広範囲に照射するとプラズマ密度が減少して十分な厚さの窒化薄膜が得られない。電極形状やプラズマ発生機構の改良を通して多種多様な窒化薄膜を創製できる技術を確立し、今後の電子科学分野の発展に寄与したいと考えている。