R7年度(2025)高柳研究奨励賞受賞
量子ドットは、量子サイズ効果により、粒子のサイズを変えることで発光エネルギーを制御でき、粒径分布の狭小化により単色光に近いシャープな発光スペクトルが実現できる蛍光体である。そのため高色域ディスプレイのバックライト光用の蛍光体としてCdSeやInP量子ドットが一部実用化もされている。申請者らは、混晶量子ドットで生じる巨大なバンドギャップボーイングに注目し、研究を推進してきた。従来、亜鉛カルコゲナイドの二元系量子ドットでは、緑・赤色発光が実現不可能とされてきたが、Zn(Te,Se), Zn(Te,S)混晶量子ドットでは、バンドギャップボーイングにより発光エネルギーを緑、赤色の発光範囲へと拡張できる。この発想を元に開発したZn(Te,Se)量子ドットでCdSeに匹敵する単色性の高い緑色発光を世界に先駆けて実現し、新たな非カドミウム系蛍光体として注目を浴びている(学術論文2, 5, 7, 14など) 。その注目度は、大手量子ドットメーカーであるNanosysやSamsungが、このZn(Te,Se) 量子ドットで青色発光の報告と共に参入してきたことからも伺え、従来の量子サイズ効果に加え、混晶組成によっても光学ギャップを制御できる混晶量子ドットの光学材料用途における有効性を十二分に示してきた。
また、量子ドット-LED等の次世代のディスプレイ様式では、量子ドットを2次元に配置することが必要であり、リソグラフィやインクジェットプリント技術の重要性が増している。特にリソグラフィでは微細なパターニングを可能とするが、量子ドットを含むレジスト膜へ電子線等を照射した場合、量子ドット表面に欠陥準位が形成され、蛍光量子収率が低下することが報告されている。我々は、高分子中で直接量子ドットを形成する「その場合成法」を独自に開発している(学術論文1,3)。この技術を応用し、2次元パターニングしたレジスト上で直接量子ドットを形成することで、量子ドットへの電子線損傷をゼロにした新たなパターニング技術を実現する。