H3年度(1991)高柳記念賞受賞
昭和40年代後半から昭和50年代初めにかけて小電力トランジスタや集積回路によって電子機器が固体化されてきたが、当初、特に高周波で大きな電力を発生するDC-RF変換装置の固体化は、信頼性確保の観点からほとんど不可能と考えられ、真空管が使われてきた。いっぽう、MOS電力効果トランジスタ(MOS-FET)の試験測定に関する研究をしていた候補者は、MOS-FETの高周波性能、熱的安定性、降伏特性などが極めて優れていることに着目した。そこで、昭和53年頃から高周波電力用MOS-FETの開発を提案し、国内有カメーカと協同して開発を推進するとともに、回路方式の研究を進めて高信頼性を有する高周波DC-RF電力変換方式を提案した。以来、十数年間、高周波大電力を発生するDC-RF変換装置の開発試作を行ってきた。
最初に試作した高周波DC-RF変換装置は、動作周波数500KHZ~1500KHZで出力3kWを有するもので、これにより米国に先がけて我が国のラジオ送信機の約90%を完全に固体化することに成功した。また、信頼性を改善するため、デバイスとシステムの両面から種々の研究を行い、従来から経験的に行われてきた設計を理論化するとともに、さらに負荷変動等の実用上の重大な問題点を解決した。
昭和63年以降、送信機以外の産業への応用にも注目し、ガス放電や高周波乾燥などの高周波電力源として使用できるMOS-FET式DC-RF電力変換装置を開発試作するとともに、工業用周波数帯での利用を前提としてMOS-FET式高周波電力源の高信頼化も進めている。
高周波電力技術にはノウハウが必要であり、世界的に技術者が不足しているが、重要な技術であるため、後進の指導と育成には特に力を入れてきた。