歴代高柳賞-歴代高柳記念賞

H3年度(1991)高柳記念賞受賞

大下 正秀(おおした まさひで)

【 静岡大学工業短期大学部教授 】

化合物半導体薄膜センサの開発と三次元素子化の研究

現代はセンサが広範囲に活用されている。例えば、自動車はエンジンの最適回転数制御、排ガス浄化、省エネ、接触・衝突時の搭乗者危険防止等、又、OA、FA機器、医用機器も最新のセンサ開発により急速に進歩した。

センサ応用の場合、要求される条件は、1)目的に適う高性能、2)形状は軽く薄く小型、3)公害対策を必要としない工程で作り、環境を守り低コストにする等である。これらの目的達成には「薄膜化」「三次元素子化」が必要になる。以上を満足させる為には「薄膜技術」により基板上に「センサ層」「電子回路層」「光発電層」等を「絶縁層」を挾みながら積層して三次元化を行う。

本研究の前期で加熱蒸着法による高性能半導体薄膜磁気センサ(lnSbホール素子)を開発した。現在、この方法により月産二千万個以上のホール素子が製造され、精密小型モーターに搭載されて、VTR、オーディオ機器、小型ビディオカメラ等に使用されている。しかし、この製法はパターン作製にエッチングエ程が必要である。そこで環境問題を考慮し、エッチングエ程を排し、同時に素子のマイクロ化・均質化を満足させるためパターン形成を先行し、続いて低温マイクロゾーン法(融点以下)により半導体層を結晶化させ同時に磁気抵抗効果を増加させるスダレ状電極の役目を果たす金属針を薄膜中に立体的に平行に析出させて次世代に強く求められている磁気抵抗効果型高性能センサ用薄膜を得ることに成功しJAP誌に発表した。

以上の研究成果は従来の高温結晶化法と較べ不純物混入を防ぎ、パターン形成後の結晶化を可能にし、膜厚の薄い領域迄マイクロ化・均質化を実現するもので三次元高性能センサの作製を可能にしたと同時に低公害、低コスト化を推進し工業界に大いに寄与するものである。

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