歴代高柳賞-歴代高柳記念賞

H4年度(1992)高柳記念賞受賞

鈴木 久喜(すずき ひさよし)

【 静岡大学工学部教授 】

音声のディジタル処理および潜水における
音声通信システムの研究と開発

鈴木久喜は、1950年代なかばから現在に至るまで、電子情報工学におけるディジタル処理に基づく音声通信処理の分野で、精力的な研究・教育活動をしてきた。論文や著書に現れた業績は数多いが、次の3つに分類できる。

  1. 音声情報処理(音声分析、音声認識、及び音声合成)
    1960年代の初期において、コンピュータによる人工知能的機能を音声認識の分野で実現するため、音声を低ビットレイトで表現する方法(ベクトル量子化に相当)を考案すると共に、多数の音声を繰り返し認識させる間に、十人十色の個人的特徴を自動的に抽出して、正しく認識できるように成長する学習機機能を実現した。近年は、中国人留学生と協力して中国語音声の認識に成果をあげた。又、音声の音韻性ばかりではなく、人の声の質に関する極めて基礎的な研究を展開している。
  2. 潜水時の高圧気体環境における音声通信システム
    海洋資源開発などに関わる潜水技術関連の分野であるが、内外の研究機関の協力を得て世界的にも独自の研究を展開しており、これまで次のような業績をあげた。深深度潜水時のダイバーの音声(ヘリウム音声)の性質を解明した。ヘリウム音声の明瞭度と了解度を改善するためのディジタル信号処理装置(ヘリウム音声修復装置)を開発した。高圧気体環境における音響機器の動作の実態を観測し、計算機シミュレーションによってその機構を解明した。潜水浮上過程で発生する血液中の気泡を検出するディジタル信号処理システムを作った。現在はこれまで収集してきた膨大な量のヘリウム音声を系統的に集大成したデータベースを構築しつつある。
  3. 電子計算機とディジタル信号処理
    この分野では高速で誤差の無い信号変換処理や、極一零型の声道伝達関数を推定するための研究および、音声生成機構の数値シミュレーションによる研究などを行なった。

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