歴代高柳賞-歴代高柳記念賞

H5年度(1993)高柳記念賞受賞

畑中 義式(はたなか よしのり)

【 静岡大学電子工学研究所教授 】

テレビ用撮像・表示デバイスの開発に関する研究

テレビジョンの入出力装置の研究はその研究の当初より重要な位置をしめていた。今日、高精細画像の取扱いの可能な時代においても一番の問題点は入出力装置の性能にかかっている。本研究は一貫してテレビジョンの入出力装置に関するものである。研究の全体は大きく三つの部分に分けられる。第一は高精細撮像デバイスに関するもの、第二は不可視光撮像デバイスの開発に関するもの、第三は表示デバイスに関するものである。

  1. 高精細な画像入力装置のために、負の電子親和力状態(NEA)を利用した新しい冷陰極素子を開発し、これを用いた撮像管を作製した。ビーム等価温度600Kの極めて低い値が得られ撮像実験において、高解像度、低残像の記録的値が達成された。また非晶質シリコンを用い新しい視点に立脚した高感度、高解像度、低焼付性の優れた性質を有する撮像デバイスを開発した。解像度1200TV本以上、感度200nA/cm2lx。
  2. 赤多線のイメージングとして焦電性のPVF2フイルムを用いたビジコンを特に高真空中で動作するものとして完成させ、赤外線イメージングの用に供することの出来るものとした。その他に、不可視光イメージングとしてX線に対する撮像デバイスを開発した。これはカドミウムテルル(CdTe)を主成分とし、カドミウムサルファイド(CdS)とのヘテロ接合を用いるもので、高感度、高解像度のX線イメージセンサとして有用なものである。この研究は新技術事業団を通して企業において実用化が成功したものである。このデバイスは空気中において変質しないためにX線用固体化イメージセンサとしても将来性のあるものである。
  3. 表示デバイスに関するものとして各種の薄膜の作製技術、特にプラズマを利用した高品質半導体薄膜の作製及び平面形電子源を用いたディスプレーの研究、さらにレーザスキャナーを応用してディスプレーを3次元形状計測へ応用する研究を行った。これらは、それぞれに共同研究を通じて企業において実用化が進められている。

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