歴代高柳賞-歴代高柳記念賞

H6年度(1994)高柳記念賞受賞

阿部 圭一(あべ けいいち)

【 静岡大学工学部教授 】

ディジタル画像処理に関する研究

本研究は、ディジタル画像処理における新しいアルゴリズムの開発と体系化を中心とするものであり、将来の汎用視覚システム実現のための重要な問題点の解決を目指した基礎研究である。その成果は大きく次の5つの領域に分けられる。

  1. 二値画像にたいする雑音除去、特徴抽出、構造解析等を高速にかつ柔軟に処理するためのアルゴリズムの体系的集合を開発した。これは、実用面で重要な二値画像処理にたいして、アルゴリズムを見通し良く設計する道具となる。また、本研究中で開発された細線化アルゴリズムは、比較評価において最高の評価が得られている。
  2. 濃淡画像をその濃度の尾根線・谷線を利用して構造表現する手法を改良し、それを発展させて濃淡画像の細線化を行う方法を提案した。現在、これを雑音の多い文書画像の二値化に応用する研究を進めている。
  3. Hough変換を利用した文字認識手法、境界の種別を利用した対境界追跡による流れ図の処理、および線図形の特徴点の抽出手法など、文書画像処理にたいする基礎的なアルゴリズムのいくつかを開発した。
  4. 二値図形を人間が考えて意味があるような図形構成要素に分解し、それらの構成要素とその間の関係を用いて複雑な図形を記述する方法を研究した。さらに、これを利用して図形概念を学習するアルゴリズムを考察した。これは、従来の図形認識の水準を越える柔軟な認識手法の開発の基礎となる。
  5. 物体認識の基礎となる、濃淡画像およびカラー画像にたいする新しい領域分割手法を開発した。これは(4)で述べた二値図形にたいする図形分解に相当する処理であり、二値図形にたいして得られた知見を基に、3次元物体・情景の柔軟な認識を行うためのマッチング手法の研究に取り組んでいる。これらの研究は直接何らかの実用を目指したものではないが、多くの画像処理の課題達成のための手法の一部として広い分野で役立つものである。

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