H19年度(2007)高柳記念賞受賞
光メモリーは、情報技術(IT)、ナノ・物質および光科学を高度に融合した技術であり、日本が世界をリードしている分野である。しかし一方で、現在の光メモリーの記録・再生方式では、記録密度には原理的な限界が存在し、産業技術上必要とされる光メモリーの記録密度を1桁以上向上させることは不可能である。光メモリーにおける日本の優位性をさらに高めるには、新しいアイディア・原理に基づくブレークスルーが必要である。
受賞者は、これまでの光メモリーの発想を根本から転換し、ビットデータを多層に記録し、再生するための理論開発、技術開発を進めてきた。ピットデータを多層に記録すれば記録容量を飛躍的に向上させることが可能である。受賞者の著しい成果は、世界で初めて、光メモリーの解析に3次元顕微光学に基づく結像理論を導入することによって、共焦点光学系を用いれば多層に記録されたデータから任意の層のデータを再生できることを示したことである。さらに全く新しい多層メモリー媒体の作製手法を示し、20層以上の光メモリー開発に成功した。 20層媒体へのデータの記録・再生は、これまで報告されている中で最も高い記録密度を実現したものであり、多くの海外学術誌で紹介され、国際会議に招待されるとともに、文部科学大臣表彰科学技術賞(研究部門)を受賞するなど、高い評価を得た。現在これらの成果は、DVD・BD(Blu-ray Disc) における2層化はもちろんのこと、さらなる多層化による高密度化技術の礎を築き、新しいメモリー開発の方向性を決定した。
さらに、上記研究成果は種々の工業部材の開発に適用可能なものであり、21世紀COEプロジェクト、地域コンソーシアム、知的クラスターなどに参画し、新しいも応づくりを目指した研究開発を進めている。