H21年度(2009)高柳記念賞受賞
梅田 倫弘(うめた のりひろ)
【 東京農工大学大学院共生科学技術研究院教授 】
複屈折計測法の開発と
異方性近接場ナノフォトニクスの展開に関する研究
- 光学透明体の応力異方性や結晶性異方性を評価できるゼーマンレーザーを用いた新規な高精度・高速複屈折計測法を開発した。特に高精度複屈折計測法では、直径数十cmのガラスレーザーディスクや液晶ディスプレイに使われている大型ガラス基板の残留応力を評価するための手法として応用され、それらの品質向上に大きく寄与した。また、開発技術を、静岡県に本拠を置く企業に技術移転を行い、世界の液晶ディスプレイ製造メーカーに計測装置が納入されて現在の液晶ディスプレイ隆盛の一翼を担っている。
- 高速複屈折計測法は、計測速度が1点あり1ミリ秒と従来の方法に比べて2~3桁向上させた手法を開発した。この手法を近接場光学顕微鏡に導入して、回折限界を超える分解能を有する複屈折分布が得られる顕微システムを世界で初めて開発し、光ディスクのプレピット周囲やナノインデント試験片の応力分布の観察および液晶薄膜内の膜厚方向の液晶分子の配向状態の観測に成功した。また、同手法を用いてIPS(平面電極)液晶デバイスにおける液晶分子の動的な観測を行い、基板界面との摩擦による液晶回転遅延現象を観測すことに成功した。
- 梅田は、これまでに採択原著論文72編、解説・総説33編、書籍19冊などを執筆し、異方性フォトニクスの発展に尽力している。
- 梅田は、東京農工大学に着任してから、学部生134名、大学院修士学生62名、大学院博士学生7名を世に送り出すとともに、2003年9月から2006年8月まで、中国ハルビンエ業大学の招聘教員として、博士課程学生の海外指導教員に任命され、同大学博士課程学生の研究指導を行った。
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