H23年度(2011)高柳記念賞受賞
近年、エチレンオキサイドガス滅菌あるいは高圧蒸気滅菌などの従来の滅菌法に替わる新しい方法として、非平衡プラズマを用いた新しい低温滅菌法が注目されている。受賞者らは、2002年より我が国において初めて窒素および酸素ガスを用いたマイクロ波プラズマ比よる医療器具滅菌技術の開発を推進し、現在までに低圧力マイクロ波放電プラズマによる低温滅菌を実証するなど、本技術成果の実用化に向けて大きく貢献してきた。平成16年度から2年間、経済産業省・地域新生コンソーシアム事業の採択を受け、医療器具用滅菌装置の実用化を目指した研究開発を地域企業とともに行うとともに、平成19年度から2年間、科学技術振興機構・地域イノベーション創出事業として簡易型プラズマ滅菌装置の開発を行ってきた。本技術では、プラズマ中で生成された酸素ラジカルによる芽胞形成菌のエッチング効果と、窒素原子および分子からの紫外線発光による菌の不活化効果の両者の相乗効果により、滅菌特性が大幅に改善できることを大きな特長としており、それらの研究成果に対して平成23年度プラズマ・核融合学会において学会賞技術進歩賞を受賞している。また、近年ではプラズマ科学技術の医療分野への応用のみならず、バイオ分野へのプラズマ応用に関する研究にも従事するなど、磁気ナノ微粒子のドラッグデリバリーシステムへの応用やウイルス検出用バイオチップなどの開発に向けた研究にも携わっている。
以上のように、受賞者はマイクロ波プラズマを用いた医療・バイオ分野への産業応用に関する先駆的研究を通して、プラズマエレクトロニクスにおける光電子科学の発展に大きく貢献している。