歴代高柳賞-歴代高柳記念賞

H24年度(2012)高柳記念賞受賞

杉浦 敏文(すぎうら としふみ)

【 静岡大学電子工学研究所教授 】

電子工学の先端医療技術・生理工学への応用における研究

  1. 日本独自の技術を用いた国産心臓ペースメーカーの開発
    厚生省主導の国産心臓ペースメーカー開発プロジェクトに参画し、心拍数制御アルゴリズムの開発を担当した。呼吸量と身体活動量の二つの指標に対してファジイ推論を用いて自然な心拍数を再現することに成功した。この手法によれば使用する指標の数に関係なく、且つどのような生理的指標に対しても極めて自然な心拍数を実現できること、また、心臓ペースメーカーに関するテーラーメイド治療の実現可能性を示した。
  2. 新生児低体温療法用無侵襲脳深部温度測定装置の開発
    水品静夫教授(静岡大学名誉教授)が設計された脳深部温度測定用の5周波マイクロ波ラジオメータシステムの研究を引き継いでシステムの製作を完了し、アルゴリズムの開発、電磁界シミュレーション、予備実験、ファントム測温実験を行った。その結果、頭部表面から5cmの位置に於いて誤差0.4℃、信頼区間約1℃での温度測定が可能であることを世界で初めて示し、実用化への目途をつけた。
  3. 生体信号によるストレス評価
    近年の製品開発に於いてはユーザーの心証を評価することが重要視されている。杉浦は、自律神経活動、脳波等を用いて、外来剌激に対する生体反応の総合的な評価を行った。特に世界的に用いられてきた前頭葉α波の非対称性を用いるAAEモデルと本邦の故吉田博士によって考案されたα波揺らぎを用いる方法(吉田法)を比較・検討した結果、両方法は互いに共通の部分と異なる部分があること、両方法を同時に適用した方が信頼性の高い、且つ詳細な評価が可能であることを示した。
  4. 「RFID機器が植込み型医療機器に及ぼす影響の評価方法に関する標準化」に関す
    るISO-TR提案審議委員会委員長として、日本発の評価方法(北大野島教授考案)をISOのテクニカルレポート(TR)に提案する為の審議と議事のとりまとめなどを行った。その結果、ISO-TR20017として正式に発行されるに至った。

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