H25年度(2013)高柳記念賞受賞
早川 泰弘(はやかわ やすひろ)
【 静岡大学電子工学研究所教授 】
エネルギーデバイス関連高品質材料の結晶成長に関する研究
- 滉晶半導体バルク結晶成長に対する重力効果の解明
インジウム・ガリウム・アンチモン三元滉晶半導体は、組成比制御により禁制帯幅を制御できるため、熱光起電デバイス用材料として有望である。温度差徐冷法と熱パルス法を組み合わせた新方法を開発し、均一組成のバルク結晶成長に成功した。また、高温溶液中の濃度分布の時間変化と結晶溶解過程・成長過程をその場観察する手法を考案し、地上では高温側の結晶よりも低温側の結晶の溶解が促進されることを明確に示した。流れ分布や濃度分布の数値解析結果と実験結果との比較により、この要因が密度差に起因する濃度差対流の発生であることを明らかにした。さらに、他機関との共同研究により、米国スペースシャトル、中国回収衛星、日本の落下塔・航空機を利用した微小重力環境下実験を行い、重力が組成分布、成長界面形状等に及ぼす効果を明らかにした。現在、結晶成長に対する結晶面方位効果を調べる研究を国際宇宙ステーション内で実施中である。
- 酸化物半導体ナノ結晶作製技術の開発と色素増感太陽電池への応用
水熱合成法によりメソポーラス構造の酸化チタンナノ結晶を作製し、溶質濃度、熱処理条件がナノ結晶の形状、サイズ、構造、光吸収特性、発光特性、電子状態等に及ぼす効果を明らかにした。また、メソポーラス構造のナノ結晶を用いて色素増感太陽電池の光半導体電極を形成すると、光電変換効率が向上することを実証した。さらに、4種類の有機皮膜剤が酸化亜鉛ナノ結晶の成長と特性に及ぼす効果を詳細に調べ、サイズの揃ったナノ結晶の作製に成功した。
- シリコン・ゲルマニウム系材料の成長と熱電変換素子への応用
熱電変換材料として有望なシリコン・ゲルマニウム系材料の均一組成結晶を成長させ、熱電性能の組成比依存性を明らかにした。シリコン・ゲルマニウムとシリコン・マグネシム・ゲルマニウムのタンデム構造デバイス作製に取り組んでいる。
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