H27年度(2015)高柳記念賞受賞
これまでⅣ-Ⅵ族、H-Ⅵ族及びⅢ-V族窒化物半導体超格子・量子井戸の作製と物性評価、デバイス応用に関する研究に取り組んできた。Ⅳ-Ⅵ族半導体量子井戸の初期の研究では、PbTe/PbSnTe、PbTe/PbEuTe、PbSrS/PbS超格子のバンド不連続の解明を行い、波長3~4μmで動作するPbSrS系レーザ、波長4~6μm領域のPb-EuTe系レーザ、波長6μm以上で動作するPbSnTe系レーザの進歩に貢献している。
これらのレーザは、分子の基本振動の周波数領域に対応し、シングルモードチューナブル動作ができれば、様々な気体のppbオーダーの検出・分析が可能になる。また、Ⅳ-Ⅵ族半導体は熱伝導率が低く、熱を直接電力に変換する熱電変換材料としても有用であり、熱電変換理論や超格子・量子井戸の効果についても検証してきた。Ⅳ-VI族半導体は、Ⅲ-V族バンド開遷移レーザに比べて高い温度で動作してきたが、室温動作、高効率・高出力動作やシングルモードチューナブル動作に課題があった。被推薦者の研究では、従来のⅣ-Ⅵ族半導体レーザの光出力が小さく抑えられる原因について解明し、光励起型の高効率面発光レーザを設計・製作している。外部共振器型面発光レーザを作製することにより、従来のレーザでは作製が困難な高帯域チューナプル動作が可能である。
それにより呼気中に排出される病気に起因する物質の検出・分析も可能であることから、医学応用としても注目されてきている。また、Ⅳ-Ⅵ族半導体を用いることにより、波長25-50μmの未開拓領域のレーザ動作が可能であり、Ⅳ-Ⅵ族量子井戸をサブバッド間遷移或いはバンド間遷移カスケードレーザに用いることにより、未開拓波長域のレーザ開発が進展することが期待される。
以上、被推薦者はⅣ-Ⅵ族半導体を中心に半導体量子井戸物性とデバイス応用に関する研究を推進し、今後の未開拓波長域を含む中遠赤外高帯域チューナブルレーザの発展に寄与するものである。