歴代高柳賞-歴代高柳記念賞

H28年度(2016)高柳記念賞受賞

山本 博資(やまもと ひろすけ)

【 束京大学大学院新領域創成科学研究科教授 】

符号化に関する基礎理論への研究

さまざまな通信システムにおいて、情報を誤りなく、安全で効率良く伝送するための符号化技術として、誤り訂正符号、暗号・情報セキュリティ符号、データ圧縮符号が用いられているが、それらの基礎理論において次のような重要な貢献をしている。

誤り訂正では、フィードバック通信路を利用すると順方向通信の復号誤り率を非常に小さくできるが、ブロック符号の最大の信頼性関数を達成できるシンプルな通信方式として、我々のYamamoto-ltoh方式が世界的に知られている。また、畳み込み符号のヴィタビ復号法に自動再送要求を組み込んだ我々の方式は、Yamamoto-ltohアルゴリズムと呼ぱれ、DSPプロセサに組み込まれて世界的に使われている。

暗号・情報セキュリティ符号化では、情報を破壊や盗聴に対して安全かつ効率良く保管できる「強安全なランプ型秘密分散法」を提案しているが、この符号化法はデータの分散保管などで広く利用されている。さらに、この符号化のアイデアを、強安全なネットワーク符号化や、盗聴通信路に対する秘密情報の多重符号化などに拡張している。また、情報セキュリティシステムの安全性は、従来条件付きエントロピーを用いて評価されていたが、盗聴者が復号した秘密情報の歪みの大きさで安全性を評価する新しい理論を構築している。

データ圧縮符号では、従来、一意復号可能な符号(誤りなく復号できる符号)の中で最適な符号はハフマン符号であると証明されていたが、その証明では1つの符号木用いることを暗黙のうちに仮定していた。これに対して2015年に、複数の符号木を用いることで、ハフマン符号よりも圧縮率のよい符号を構成できることを示し、最適な符号の構成法を与えた。この成果は、データ圧縮における60年間に渡る常識を覆したものであり、大きな注目を集めている。

上記以外にも、整数のユニバーサル表現、同定符号、LDPC符号、Polar符号、データ圧縮符号における競合最適性など、さまざまな符号化における基礎理論研究に大きく貢献している。

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