液相法は、先端材料への応用が可能な高品位ナノ粒子や薄膜を合成可能である。中でも金属アルコキシドを原料としたソルーゲル法あるいはCSD法は優れた機能性を有するナノ粒子や薄膜を低温合成できる非常に優れた特徴がある。候補者は、ハイプリッドナノ粒子や酸化物エレクトロニクスに貢献できるSi基板上の高性能強誘電体薄膜などについて、前駆体溶液の分子設計によりナノ構造制御と高機能化を実現している。
- ソルーゲル法による酸化物ナノ粒子の合成
アルコキシドを原料としたソルーゲル法では、前駆体の分子設計が可能となる場合がある。分子設計により低温合成やナノ粒子表面へのナノコーティングが可能となり、新規なハイプリッドナノ粒子が実現できる。例えば本研究では、結晶化に1000℃以上が必要であるa-アルミナのアルコキシド前駆体を分子設計することで、500℃という世界で最も低温でのa-アルミナの結晶化に成功している。また、数十nmのナノ粒子表面へのナノコーティングにより、スマート・ウインドウに応用可能なS102-V02ハイプリッドナノ粒子や高性能触媒としての中空チタン酸バリウムナノ粒子の合成に成功している。近年では、次世代全固体Li二次電池の開発に不可欠な酸化物固体電解質ナノ粒子の合成にも成功している。
- CSD法による強誘電体薄膜のストレスエンジニアリング
強誘電体は、誘電性や圧電性あるいは焦電性を示す多機能材料である。近年では薄膜化による強誘電体メモリーや圧電MEMSに応用する研究が盛んである。しかし、実際の応用にはSi基板上に薄膜を作製する必要がある。Si基板上に薄膜を成膜した場合、熱膨張係数差に基づく引つ張り応力が残留するために電気特性が著しく損なわれる。本研究では前駆体の分子設計により、ナノサイズの孔を有する高熱膨張酸化物電極薄膜をSi基板上に実現した。これによりSi基板上でのストレスエンジニアリングを可能とし、高性能強誘電体及び圧電体薄膜をSi基板上で実現した。