歴代高柳賞-歴代高柳記念賞

R4年度(2022)高柳記念賞受賞

青木 徹(あおき とおる)

【 静岡大学電子工学研究所教授 】

ナノビジョンサイエンスに基づく放射線画像検出器の実用化

放射線画像検出器は重要にもかかわらず可視光に比べ市場規模が小さく、また技術的課題も多いため実用化が遅れていた。物質透過率の高い放射線を検出するために吸収が大きく厚い材料でデバイス化する必要があり、シリコンを用いた可視光デバイスとは全く異なる構造や化合物半導体のプロセスなど基盤技術から研究する必要があった。

X線を一旦可視光に変換してから検出する間接変換型に比べ、効率が高く画像ボケの生じない半導体を用いた直接変換型の研究をすすめ、ナノ秒レーザでの非熱平衡プロセスによる独自のレーザドーピング技術を研究し低 リーク型pn接合型ダイオード構造CdTe検出器および画像検出器を実現した。三次元積層、高密度タイリング、 低温低圧バンピングなどデバイス周辺技術も研究し、原理追求のみでなく実際にイメージングが可能かつ実用化 が可能なデバイスを実現した。

また、静岡大学電子工学研究所発案のナノビジョンサイエンスの概念に基づき、光子・電荷の個々の取り扱いにより原理的に計数可能な光子および発生電荷を「カウント」することで、フルデジタル処理でデバイスを実現し、一般的なX線源で撮像できるエネルギー弁別型の画像検出器を開発した。本研究は単なる基盤研究のみでなく、実用化を視野に入れた設計を研究当初から行い、スピンアウトベンチャーで製品化されている。この結果、正確な計数で単なる放射線撮像から画像計測へ発展し放射線画像情報学への道を切り開いた。

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