R7年度(2025)高柳記念賞受賞
立岡浩一は、シリサイド半導体材料とそのナノ構造の合成・物性評価において国際的に先導的な研究を展開してきた。特に、Mg₂Si、MnSi₁.₇等ナノシート束の創製において、化学溶液法・溶融塩法・気相合成法を駆使し、ナノシートを整然と積層させる独自の合成技術を確立した。これらはナノエレクトロニクスや熱電材料への応用が注目され、 取得した特許8件の技術をもとにA-Step(JST研究成果展開事業)では企業と連携して社会実装を目指し、導電性に優れたシリサイド半導体ナノシート束の開発に成功している。
この研究の根幹には環境負荷の少ない半導体の創生があり、シリサイドにとどまらず酸化物やシリケートへと対象を広げた。その先駆的活動として、1997年頃有志とともに「環境半導体研究会」を通じて、持続可能な材料開発を視野に入れた研究交流を主導し、世界に発信してきた。
さらに、複数の組成比をもつシリサイド化合物の選択成長法を世界に先駆けて確立し、得られたMnSi結晶はNASAによる惑星間物質の同定のための標準試料として採用された。この研究には立岡自身も参画し、新鉱物の発見者のひとりとして名を刻んでいる。現在もその構造解析を継続し、電子科学分野へのフィードバックとしてスキルミオン構造変調の可能性を検討している。
発表論文はJJAP Spotlights 2020 やJCS-Japan Editor’s Choice 2024 に選出されるなど高く評価されている。また応用物理学会「シリサイド系半導体と関連物質研究会」の設立に尽力し、第2期・第6期委員長として同研究会を牽引した。APAC-Silicide 2025での基調講演、米国ECS Meeting 2007を含む約30件の国際会議にて招待講演を行い、さらにCambridge大, Caltech, NUS, NRELなど海外23機関と共著論文を発表し、国際共同研究を積極的に推進することで本分野の発展に大きく貢献している。