歴代高柳賞-歴代高柳記念賞

S60年度(1985)高柳記念賞受賞

宇野 正美(うの まさみ)

【 静岡大学工学部教授 】

受信機用フェライト棒特性測定装置の開発に関する研究

ラジオ受信機のアンテナコイルに用いられるフェライト棒に要求される特性の、導磁率および損失は通常、フェライト棒をそう人した規定の空心コイルのインダクタンスおよびQの各々の値をQメータにより測り、これから間接的に推測するという方法が用いられている。しかし、Qメータ法では同調をとる作業が容易でなく、時間を要し、またメータやダイヤル目盛からQやインダクタンスを読み取るので、測定誤差が大きい欠点がある。

本研究は、フェライト棒を磁心とするコイルのQとインダクタンスの測定が同時に、そして自動的かつ短時間に行われ、さらに読み取りはデジタルメータを用いて容易、正確になされる装置の開発を目的とする。得られた成果は以下のようである。

  1. インダクタンスの値を直読とすべく、フェライト棒磁心コイルと可変容量から成る回路に微小インピーダンスを直列にそう人した同調回路を考案した。
  2. 同調回路に可変容量ダイオードを用い、これに鋸歯状波掃引電圧を印加して自動同調とした。同調時の可変容量の端子電圧はQに比例し、これと、微小インピーダンスの端子電圧の比はコイルのインダクタンスに比例する。しかし、これらの電圧は瞬時に生じるパルス波であり、メータによる読み取りは困難であるが、パルス測定用として開発した「帰還型パルス伸長回路」を用いて、上記パルス電圧をそれぞれのピーク値に比例した、一定の直流電圧に変換して、メータによる読み取りを極めて容易とした。
  3. 本研究の測定原理は、「帰還型パルス伸長回路」の利用により実現できたものである。この伸長回路は、ICイヒされたサンプルホールドなどにもその原理が応用されている。本装置もその一応用例とみなすことができよう。試作器の測定精度は3%以内、また測定時間は0.5秒程度であった。

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