電子材料の表面や薄膜に関係する問題は、最近のエレクトロニクスの発展とその広範な応用からみて、極めて重要である。多くの薄膜デバイスの電子的な性質が薄膜と表面ないしは界面に起る現象に決定的に依存するため、デバイスの研究や開発には、薄膜、表面及び界面の物性の解明、及びその制御技術が非堂に重要な役割を占めている。本研究は、電子材料表面及び薄膜の新しい作成技術とその評価方法の開発を目的としている。主な成果は次の通りである。
- 金属薄膜が各種ガスと反応し、化合物薄膜を生成する過程を直接観察出来る新しい電子回折装置を開発した。
- 高純度のSi、Ge、Snなどの単結晶薄膜を岩塩基板上で成長させる技術を開発し、そのエピタキシャル成長過程が基板表面に存在する電界によって著しく影響をうけることを発見した。
- H-VI族化合物半導体(CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、及びZnTe)の蒸着膜の結晶構造やエピタキシャル成長過程を基板表面への電子線照射によって人工的に制御出来る技術を開発した。
- CdSやZnSの良質の単結晶膜を気相成長法によってSi、Ge、GaAs単結晶基板上に合成するための最適作成条件を開発し、そのエピタキシャル成長に及ぼす基板表面の化学効果を解明した。
- 青色のエレクトロルミネッセンスを示す粉末型ZnS : Ag、Cu、CI素子を開発し、これをSi単結晶基板上のエピタキシャル薄膜発光素子に発展させた。
- Si単結晶基板上にCu/ZnS複合膜を作り、固相反応を利用することによって、高輝度の単結晶ZnO薄膜発光素子を得た。また反応性RFスパッタリング法により、単結晶ZnO薄膜の最適作製条件を開発した。
- 超高真空中半導体単結晶の清浄表面における原子、分子の吸着過程を直接観察し、かつ制御出来る新しい電子回折装置を開発し、これを金属/半導体の界面反応の研究に発展させた。これらの研究成果は電子材料及び素子の開発研究の基礎として極めて有意義であると考えられる。