歴代高柳賞-歴代高柳記念賞

S61年度(1986)高柳記念賞受賞

安藤 隆男(あんどう たかお)

【 静岡大学電子工学研究所教授 】

画像電子デバイスの開発に関する基礎的研究

最近のエレクトロニクスの発展とその広範な応用の中にあって、画像の果す役割はますます大きくなっている。そこで、画像を電気信号に変換する撮像デバイスの固体化技術の開発が極めて重要な課題となっている。

本研究は、多くの優れた特長をもつ固体撮像デバイスの構成要素技術と設計手法の基礎開発を目的としている。得られた主要な成果は次の通りである。

  1. 単結晶シリコン基板上に集積回路技術を応用した集積化固体撮像デバイスを我が国で始めて実現し、動作の理論的解明ならびにデバイス設計上の基礎を与えた。また、この撮像デバイス技術は、MOS型固体撮像デバイスの基礎として発展されている。
  2. 電荷結合素子(CCD)の電荷転送動作が固体撮像デバイスの走査に利用できることを実証し、併せてCCDが本質的にもつ電荷転送効率の映像信号依存性を軽減できる動作条件を解明した。これらの技術はCCD型固体撮像デバイスの基礎としてその実用化に貢献している。
  3. NHK技術研究所と共同してCCD型固体撮像デバイスを使用した三板式のカラカメラを我が国で始めて開発し、その実用性を解明するとともに応用上の基礎技術を確立した。
  4. ホトセンサの分光感度分布を電気的に制御できる技術を開発し、色分離機能を内蔵した撮像デバイスに発展させた。この考えの基礎はカラーセンサなどにも応用されている。
  5. 撮像面上に画像情報を記憶できる新しい形式の撮像デバイスを考案し、画像情報め記憶・読出し・撮像の各動作についてその特性を解明、デバイス設計の指針を与えた。
  6. 記憶機能をもつ固体撮像デバイスの応用として撮像面上で二つの画像信号間の乗算処理が実現できるデバイス構成を考案し、画像乗算器の動作原理を解明した。これら一連の先駆的研究成果は画像電子デバイスの開発研究の基礎として極めて有意義であると考えられる。

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