歴代高柳賞-歴代高柳記念賞

S61年度(1986)高柳記念賞受賞

藤安 洋(ふじやす ひろし)

【 静岡大学工学部教授 】

ホットウォール法による赤外及ぴ可視域発光材料用IV-VI
及びH -VI族化合物半導体超格子に関する研究

江崎等により提案された半導体超格子は電子と正孔を同一空間の量子井戸中に閉じ込めるのでレーザの性質向上等に適する。 PbSnTe系半導体超格子は赤外線常温動作レーザ材料として、又ZnTeSeS系半導体超格子は赤色~紫色の発光ダイオード材料として有望である。本研究ではこれらの超格子作製において、ホットウォール法の利用を考え、蒸着炉や成長一中断法等新しく考案することによって、始めてこれに成功し、以下の物性及び応用上の成果を得た。

  1. PbSnTe系超格子:代表例としてのPbSnTe-PbTe超格子ではオージェ電子分析、X線回折により、周期長(200A°)の決定と構成原子の拡散を評価した。電子構造に関してはサイクロトロン共鳴、光電特性よりタイプI″超格子であることを示した。更に不純物添加によりバンドを変化させ6μm(200K)のレーザ発振及びPbEuTe系超格子を用いたレーザ発振に成功した。
  2. ZnTeSeS系超格子
    ZnTe、ZnSe、ZnS間の格子不整合は5~13%であるが、一層が5~10Å厚からなる超格子の反射高エネルギー電子線回折、X線回折、ラマン散乱測定より、拡散が小さく、界面の鋭い良質の歪み超格子が得られたことが分り、又非常に強いフォトルミネッセンス(PL)を観測し、主として以下の物性が解明された。(1)ZnSe-ZnS超格子では歪みと量子効果による青色~紫色のPLを観測し、理論解析によりこの超格子はタイプIであること及び深い不純物中心による発光が歪み超格子では押えられることを得た。又(2)ZnTe-・ZnSe超格子では赤色~緑色のPLを観測し、その構造はタイプI’であることを得た。又、ZnTe層にp型不純物を添加したZnTe-ZnSSe超格子は青色発光ダイオード材料に有望であることを理論計算により示した。

『歴代高柳記念賞』贈呈一覧はこちら