S62年度(1987)高柳記念賞受賞
半導体集積回路製造技術は、近年急激に進展し、各種情報を演算処理するマイクロ・プロセッサが安価で大量に供給できる時代になった。現在、人口頭脳、ロボット、医用検査システム等で、人間の単純、危険な作業或は人間の能力では不可知な情報を収集・判断する機器の開発が盛んになった。従って、外来情報を収集してマイクロ・プロセッサに入力する超小型、多機能、高信頼性のセンサへのニーズが高まってきた。
本研究は、ガス・水蒸気及びイオン等を検査・識別する化学センサの研究開発の一環を成すもので、ファインセラミックス、有機高分子材料等の新しい機能材料とシリコン集積回路技術を組合わせた新しい研究分野を指向したものである。なかでも21世紀の無公害エネルギーとして注目されている水素ガスの利用に不可欠な水素センサの研究では、センサとアクチュエータ機能を備えたユニークなセンサ・デバイスを開発した。本デバイスはシリコン基板上に高温動作(約120℃)に必要な加熱ピークと温度センサに水素センサを配置した超小型集積化センサである。更に、信頼性向上のためシリコン酸化膜に代わる種々のトンネル絶縁膜の研究を続けている。
また、居住空間、工業、農業等の広範な分野で望まれている水分量の制御は高温多湿な我国では特に重要であり、温度と共に湿度の制御に必要な信頼性の高い湿度センサの開発が期待されている。我々が開発した集積化温・湿度センサは、物理・化学的には安定なポリイミド樹脂を用い、温・湿度センサをシリコン基板上に組込んだもので、現在企業化の段階にある。その他湿度センサの信頼性向上を目的として、市販のセラミック及び高分子材料を用いた各種センサと共に試作したセンサの湿度特性測定と種々の劣化試験を行い、新たにセンサの評価方法と設計基準を提案した。